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令和3年度春の企画展 残された言葉や声をたずねて

3. 苦難を乗り越えて Episode-9 Image

左腕を負傷し、麻酔なしで手術を行う

Iさんは、昭和17(1942)年、シンガポール攻略戦の最中、ブキテマ高原での戦闘中に至近距離で砲弾が炸裂し左腕を受傷します。刺さった鉄片を麻酔なしで一挙に取り出され、失神するほどの苦痛を受けました。


決死の覚悟で帰国

収容された陸軍病院で治療を受ける間、内地還送の命令を受けるものの順番が回ってこず、乗船できずにいました。しかし、先に出航した病院船はすべて撃沈されたというニュースを聞き、自身が日本に向けて出航する際には死ぬ覚悟で乗船しましたが、無事に日本に着くことができました。


戦争体験と晩年の思い

戦後は、左腕が不自由というハンディを抱えた生活を送りましたが、自分で工夫してすべて行ってきました。60歳の定年後、身近な幸せのエピソードをまとめたミニコミ新聞を作るなど独自の生き方をされてきました。そして、幾度となく死線を乗り越えたIさんが100歳を前にたどり着いた言葉は感謝でした。「不自由だったが、不幸な人生ではなかった。感謝です。」


出展資料:書籍『読んでください』

出展資料:書籍『読んで下さい』

定年退職したIさんが発行したミニコミ新聞をまとめた書籍。身近な幸せなエピソードを集めた内容であり、発行部数は3500部にも及んだ。