当館では2月末、2階常設展示室の「戦後の労苦」展示を一部補強するための工事を行いました。
多くの戦傷病者は、戦後の長きにわたり重い障害を負いながらも、様々な労苦を妻と共に乗り越えて一生懸命前向きに生き抜いてきました。今回の補強工事は、「戦後の労苦」ゾーンに「ともにのりこえて」のコーナーを新設して、こうした戦傷病者4名の人生を写真や映像資料、象徴的な実物資料により紹介するために行ったものです。
「ともにのりこえて」コーナーにある証言映像収録者のタイトルと内容および展示資料を紹介します。
「小学校を出て先生に」
左腕を失いながらも苦労の末、小学校の教員となり、生涯を通して僻地教育に尽力されました。妻・友人に支えられた感謝の気持ちを伝えています。
展示資料:教員時代を集大成した体験記「導かれ支えられて」
「支えられた歩み」
両足切断の障害を克服し、時計店を営みながら、家族の支援と理解のもとで身障者の自立更生に貢献した様子を伝えています。
展示資料:自活のため手に職をと学んだ時計修理工時代の道具類
「母に支えられて…」
右腕を失い黄燐弾で顔面と足に火傷を負い、将来を悲観していた時の「母の一言」で立ち直り、戦争で家族を失った園児を「母親」の代わりになって育て、福祉一筋に生きてきた姿とともに母親への感謝を伝えています。
展示資料:昭和21年に書かれた手書きの体験記「乙女戦記」
「生きる…それは死ぬよりつらかった」
両手切断のうえ左眼を失明しても、それをはねのけて元大工の力量を活かし工務店を立ち上げた姿を伝えています。
展示資料:戦後、工務店に勤務した時にも使用した大工道具
ここで紹介している方々を含め全ての証言映像は、1階証言映像シアターや情報検索コーナーでご覧いただくことができます。人生の労苦を家族と「ともにのりこえて」“頑張っている”人々は、見る人に生きる勇気と希望、そしてどんな困難に直面しても生きる気概を持つ大切さなどを伝えています。ぜひ、ご覧下さい。