戦後75年を迎える今年は、戦傷病者とそのご家族にとって大きな節目の年にあたります。本展では、戦傷病の中で特に重度障害とされた脊髄損傷と箱根療養所での車いす生活について取り上げています。また、車いすそのものにも目を向け、戦中・戦後における車いすの役割や、戦後のパラリンピックスポーツへの進展などについても紹介しています。
先の大戦で負傷した兵士は、傷の手当、治療を受け、退院(除隊)後には国を銃後で支える傷痍軍人として「再起奉公」するために陸海軍病院でリハビリと職業訓練に励みました。一方で、重度の障害を負い、日常生活が困難となった傷痍軍人は社会復帰(再起奉公)がかなわず、箱根療養所で療養生活を送ることになりました。
展示構成は、①車いすの歴史と戦場での脊髄損傷、②箱根療養所での療養生活、③家族や子どもたちとの思い出、④1964年東京パラリンピックでの車いすと現在の車いす、になっています。車いすでの療養生活は、戦中・戦後を通して医療関係者による専門的なケアだけでなく、家族の介護と支援がなければ成り立たないものでした。そうした中で入所者は、家族同士の結束も深めながら、戦後は傷痍軍人会の活動やパラリンピック出場に向けて意欲的に取り組んでいきました。当館が所蔵する箱根式車いすのほか、最新モデルの競技用車いすも展示しています。後半は2021年開催予定のパラリンピックに思いを馳せながら観覧して頂きたいと思います。
今回はテーマが「車いす」であることから、車いす使用者の目線で観覧できるよう、パネルや資料の配置と導線を工夫しました。車いす利用者はもちろん、お子様にも見やすい高さになっています。
なお当館2階の常設展にも、箱根式車いすや入所者の製作した竹細工などが展示されています。企画展とあわせてご観覧頂ければと思います。