■「平和の光を見つめて」(13分46秒)
本作品にある幾葉かのモノクロ写真が、その瞬間を正確に切り取っていまに伝えています。昭和19年8月、弱冠16歳で志願の入隊を果たした少年は、寄せ書きに埋め尽くされた日章旗や鉢巻とともに、勇躍出征を遂げました。ゆく先は満洲。時に17歳の昭和20年1月、それが若き日の証言者でした。その後、実際の戦闘を経験することなく終戦を迎え、昭和21年1月、金州での強制労働中に不慮の事故に遭遇。この時、片眼の視力を失った証言者は、未だ二十歳に届かぬ青年でした。受傷は青年をして苦悩の淵へと追いやりました。しかし、それを救ったのは、他でもない父親でした。昭和22年の復員後、父親の勧める職場に身を投じ、日々の仕事に価値を見出した証言者は、障害を克服して生きる道に目覚めます。そんな証言者にとって、やはり心の片隅に残るのは亡き戦友たちのことでした。「死んだ人は残念ながら語れない」という証言者はまた、実際に語れるのは生きて帰った傷痍軍人であるともいいます。いま証言者は、平和の語りべとして、日々その言葉を実践しています。
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想い出深き浜辺。
かつて証言者はここで泳いだという。 |