平成25年11月の日本傷痍軍人会解散に伴い、貴重な資料を多数ご寄贈頂きました。その資料の中から2点の肖像画を紹介します。
左は野村吉三郎海軍大将、右は蒲穆(かばあつし)陸軍中将を描いた額入りの油彩画です。共に在りし日の礼装姿が描かれています。昭和27年11月の日本傷痍軍人会創立時より、野村海軍大将は総裁として、蒲陸軍中将は会長として、長年傷痍軍人の厚生に尽力しました。作者は共に、旧一万円札の聖徳太子などを描き、全日本肖像美術協会の総裁を務めた事のある馬堀喜孝画伯です。
この写真は昭和43年5月21日、「にっしょう会館(戦傷病者会館)」のロビーにて撮影されたもので、当時の日本傷痍軍人会会長である豊嶋房太郎氏をはじめ、沖野専務理事など、日本傷痍軍人会の黎明期から隆盛期を支えた幹部達が写されています。背後の壁面には、軍人傷痍記章の額と共に2点の肖像画も見られます。
『日傷月刊(第162号)』の記事によれば、蒲会長の油絵のもともとの持ち主は、「全国傷痍軍人の慈父である蒲会長」の肖像画を残すべく、「当時、病床にあった蒲会長の了承を得て、礼服姿の写真をもとに」馬堀画伯に描いて貰い、「にっしょう会」館竣工を記念して、日本傷痍軍人会に寄贈したとのこと。また、野村総裁の油絵は別の会員が「尊敬する野村総裁の遺徳を偲びたい」と蒲会長の肖像画と対になるよう、馬堀画伯に依頼。会館竣工の前に完成を迎え、晴れて日本傷痍軍人会の英雄的存在である二名の肖像画が並んで飾られる事となったのでした。
日本傷痍軍人会の事務所は沖野専務理事の私邸から始まり、丸の内のガード下など、長年転々としていました。念願叶って、ようやく自らの会館に、会員の尽力により、当時既に亡き功労者の立派な肖像画を飾る事が出来たのでした。
しかし、このにっしょう会館は既に閉館し、現存していません。会館の閉館後、この油絵は新しい事務所で保管され、解散を見守りました。しょうけい館に寄贈された後は、撮影などの記録作業を経て、燻蒸の後、美術品倉庫にて大切に保管されています。
日本傷痍軍人会に関する資料はほかにも多数ご寄贈頂いています。今後の館だよりで紹介しますので、ご期待下さい。また、しょうけい館の常設展示では日本傷痍軍人会に関する資料を展示しています。黎明期の写真などもご覧頂けます。また、図書コーナーには日本傷痍軍人会やWVFに関する書籍もございます。是非ご来館の上、ご覧下さい。
【小景(しょうけい)第31号】